医療の現場

最近の政治家は 明らかに不正行為をしていても 何かと言葉を濁し国民を欺いている。 ここ数年特にひどいように思われる。

いえ、政治家だけではない、新聞を見ていると連日のように会社のトップのパワハラ、セクハラ、郵便局員が顧客をだまして荒稼ぎ、アルバイトを雇って不正な署名活動、学校の先生が生徒に性的暴力等々。そして医師が母親と共謀して父親を殺したのでは・・との報道もある。


最近の世の中が大いに乱れているのを感じているときにこんな本を読んだ。

この本は 国立大学の最高峰の病院長が謎の死を遂げた。次の院長にはだれがなるのか?4人の副院長が候補にあがるが この4人とも相当な個性の あくどい医者である。




4人の副院長たちは あらゆる場所で自分が所属している科が 人間にとって最高であると主張し、譲らない。内科と外科の対立。メジャーな科とマイナーな科の対立。

ゴルフの途中にも お互いの欠点を言い合うし それどころか  二人の若い医師が結婚することになり、二人それぞれがたまたま対立する副院長に所属する医師だったため 祝宴のさなかにも お互いの科の欠点を言い合い、また自分の科を極端にほめて・・・・「なにもこんな場所でまで言わなくても‥」と思うような場面があちこちに出てくる。


久坂部さんの講演を聞きに行ったことがある。医師の父親の最後をみとった話をしてくれた。父親は医療をどちらかというと否定しておられ、治療を拒否したのだったと思う。ご本人も現役の医者だから この本の馬鹿バカしい争いも あながち作り話ばかりではなさそう・・・各科の良い面、悪い面を このあくどい個性の副院長を通して吐露しているのだろう。

これまで久坂部さんの「無痛」「老乱」「悪医」「芥川症」などを読んだ。この「院長選挙」は これまでとは違い どちらかというとコメディータッチの小説。登場人物にももじった名前を付けていてクスッとさせられる。 


最後のほうで 院長選挙に関して看護部長にインタビューしたときの場面。「身近な現場にいられる立場として先生はどんな存在でしょうか」と質問した時のこたえ。

【立派な人もいなくはないけど 大半は人間的に未熟。医師になろうとした人は子供のころから がり勉で成績さえよければ親や教師にちやほやされて育っている、ちょっとけなされたり批判されるとむきになっておこる、無意識に特権階級意識を持っていて患者さんに対しても症状や検査値ばかりに目が行く、子どもを医学部に入れたがる親は無理に勉強を押し付け 過剰に機嫌を取り その環境になじむと子供は勉強さえしていれば楽なわけ、友達との葛藤もないし、団体生活のわずらわしさもない、チームプレーの達成感もない。その学生が医学部というある種、均一な環境に入るともうそれが自分たちの世界だと思ってしまう、社会に出てからも先生、先生って呼ばれて 思いあがってしまい 患者や看護師に対しても上から目線で接してくる。こうやって未熟な医師が生産され続けている】


確かに子供のころから失敗しらず苦労知らずで来てしまうと 人間的に性格に欠陥がある人になってしまう、というのは自分の周りを見ても感じることだ。  もちろんそんな人ばかりではないが・・・

『若い時の苦労は買ってでもせよ』というのを思い出した。


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