恋心ではない感情
2003年の芥川賞受賞作品
題名が独特なので早くから気になっていたが 今回初めて 綿矢りさ さんを読んでみることに・・・。
綿矢さん 大学在学中に書いた小説で10代で芥川賞受賞とはすごいなぁ
中学生高校生の頃の複雑な心境を描いている小説。
高校生のころだったか、自分は姉や母との軋轢(?)にもやもやしたものを感じながらも 自分からは態度や口に表せないタイプなので ひそかに大学ノートに 周りの人々の名前を変え、自分を主人公にして細かい字で小説もどきの文章を書いていたことを思い出した。もちろん 文章力もないし、それほど他人をひきつけることのできる内容でもないので この作品と比較するのもおかしな話だが・・・ 私は友人とよりも家族との意思の疎通をうまくとれなかった日々を 自分の中で整理したくて書き綴っていたように思う。断捨離が叫ばれた数年前、古い日記などともに これが出てきたが破り捨ててしまった。捨てる前にちらっと読んで 自分の幼さ、世間知らずな若い自分に あきれてしまった。
この「蹴りたい背中」は
女子高生ハツは 周りが幼く見えて群れを作っているのに嫌悪感を覚え、一人でいるが でも本当は寂しくて仲間に入りたいような・・・・要するにコミュニケーション力が足りない子。「人にしてほしいなら、まず自分が与える」でも「やってあげたいことがないなら求めない」 それに気が付かず 周りを批判ばかりしている。ハツはそんな子。
「誰にも気にしてもらわなくてもいい」と口では言っているが 本当はやはり「誰かに認められたい」「認めてもらいたい」と強く思っているのだと思う。
同じくはぐれ者の にな川君が気になって仕方がない。にな川君はモデルのオリちゃんの熱狂的なファン。そのオリちゃんに ハツがコンビニで出会ったことがあると聞いてから ハツに接触してくるようになる。いつしかハツは にな川君の部屋に入り込むようになる。ハツが にな川君にいだいている感情は 恋心ではない、と思う。しかし部屋中オリちゃんのものであふれかえっているにな川君と一緒にいるときに ふとにな川君の背中を蹴りたくなって・・・にな川君を蹴りたくなったのは二度あって、というか 二度実際に蹴っている。その時は きっとハツ自分自身に対しても「蹴りたい」気持ちがあったのでは??
ハツには絹代という一人だけ話せる友人がいる。この小説には 比喩や表現力がすごいな、と思う部分がたくさんあるが ハツと絹代との関係はもう一つありえないような気がするし、ハツがにな川君の部屋に一人でたずねて行ったり にな川君の唇に触れたりするような ハツの気持ちも理解できない。
いずれにせよ 思春期の頃というのは 気分が安定していないというか、本人も気が付かないうちにおかしな行動をとっているというか・・・
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